屋根置き、期間は4分の1 投資回収早める
経済産業省は太陽光発電の事業者向けの給付制度について、発電量1キロワット時あたりの金額を現状の3倍程度に増やし、給付期間を4分の1程度に短くする。2026年度にも実施する。太陽光パネルなどの投資回収を短期間で終えられるようにして、再生可能エネルギーの導入拡大につなげる。
固定価格買い取り制度(FIT)と呼び、太陽光発電の事業者は工場やビルの屋根で一定規模以上の発電量があれば、1キロワット時あたり12円を20年間(24年度に開始する場合)受け取れる。家庭向けは同16円で10年間となっている。事業者向けも平地に置く形式は金額が異なる。今回の制度改正は事業者による屋根置きに限る。
26年度にも買い取り価格を増やすとともに、給付期間を5年程度に短縮する。現状の給付水準では、一般的に投資回収の期間は15年前後とされる。近年は金融機関の融資基準が厳しくなり、10年以上の回収計画では融資を受けづらくなっていることから、長期間の給付が太陽光発電の導入の足かせになっていた。
太陽光は日本の再生エネのうち普及が最も進んでいる電源で、22年度の発電実績で電力量全体の9.2%を占めた。原子力の5.5%を上回る。太陽光発電を巡っては山間部での開発で防災や景観面でのトラブルが相次いでおり、建物の屋根への設置が拡大のカギを握るとみられている。
経産省は有識者による専門委員会で議論し、24年度中に詳細を決める。
政府は同じく24年度中に40年度の電源構成を定める新たなエネルギー基本計画をとりまとめる。現行目標は30年度に太陽光や風力といった再生エネを全体の36~38%、原子力を20~22%としている。新計画では再生エネの比率を引き上げる方向で、FITの制度改正で実現を後押しする。
固定価格での買い取り制度は再生エネの推進を目的に創設された。一般家庭などの電気代に上乗せして徴収している「再エネ賦課金」を原資とする。経産省は賦課金の負担が今より増えない範囲で買い取り価格の見直しを進める。投資回収の期間が短くなれば、金利負担が軽くなる点を考慮し、具体的な金額と給付期間を決定する。